前職でマッチング業務を担当していたころ、埼玉県のあるお客様からご連絡をいただきました。「3年前に外壁を塗装してもらったのだけれど、最近一部が色あせてきた気がして、保証で対応してもらおうと思ったら業者さんの電話番号が使われておらず、ホームページもなくなっていた」というご相談でした。
証明書は手元にある。工事後に受け取った保証書もある。でも、連絡する相手がいない。
そのお客様の困惑されたお声は、今でも耳に残っています。私にできることは限られていて、あの件は消費生活センターへのご案内でお役をお返しするしかありませんでした。申し訳ない気持ちで電話を切ったことを、今でも思い出すんです。保証という言葉がこんなにも頼りなくなる瞬間があるのかと、改めて感じた出来事でした。
外壁塗装の見積書や提案書をご覧になると、「○年保証」という言葉を目にされると思います。ただ、この「保証」には大きく二種類あって、仕組みがまったく違います。
一つ目は、塗装業者が独自に発行する保証です。「自社保証」と呼ばれることもあります。工事をした業者が責任を持って対応しますという約束ですが、その会社が廃業・倒産してしまうと、保証は事実上機能しなくなります。証明書が残っていても、それを受け取る相手がいなければどうにもなりません。
二つ目は、塗料メーカーが発行する保証です。塗料メーカーが認定した施工店に対して発行するもので、業者とメーカーの両方が保証に関与する形を取ります。業者が廃業してしまっても、メーカーの窓口が残ることがあるため、業者単独保証と比べて連絡先が途絶えにくい特徴があります。
どちらが良い悪いという話ではなく、「自分が受け取る保証書がどちらの種類なのか」を確認しておくことが大切だと思っています。工事が終わってから保証書をじっくり見て「これは業者の自社保証だけだったのか」と気づいても、選び直すことはできません。選ぶ前に少し確認しておくだけで、10年後の安心が変わることがあります。
業界に身を置いていた年月の中で、業歴20年・30年という会社が突然廃業するのを目の当たりにしたことが複数回ありました。後継者がいない、代表が体調を崩された、融資の問題が重なった……表からは見えないところで事情が積み重なっていることが多かったんですよね。
「ホームページがしっかりしている」「実績が豊富」「対応が丁寧だった」——これらは確かに大事な判断材料です。でも、10年後も会社として存在しているかどうかを外側から見極める方法は、残念ながらとても難しい。
だからこそ、業者独自の保証だけに頼らない選択肢を知っておいてほしいのです。たとえばメーカーの認定施工店になっている業者を選ぶこと。認定を受けるには施工品質の基準を満たす必要があり、メーカーとの関係性が工事後も継続します。すべての状況でリスクをゼロにできるわけではありませんが、業者が消えてしまったときの連絡先が複数あるというのは、お客様にとっての安心材料になり得ると思っています。
先日も、お問い合わせの中で「工事から8年が経ってそろそろ再塗装を考えているが、当時の業者の名前で検索しても出てこない」というお声をいただきました。こうした声は、決して珍しいものではありません。
もし今、業者選びの途中にいるお客様がいらっしゃるなら、見積もりや提案を受けるときにぜひ聞いてみてほしいことがあります。「この保証書は御社が発行するものですか。それともメーカーの保証も付きますか」——これだけです。
この一言に対して、保証の仕組みを丁寧に説明してくれる業者と、「うちが責任を持ちますから大丈夫ですよ」と言葉だけで流す業者とでは、姿勢に違いがあると私は感じています。もちろんどちらが優れているとは断言できませんが、工事後のことまで考えて説明できる業者は、それだけ長く付き合う意識を持っているということでもあります。保証書を受け取ってから確認するのではなく、選ぶ前に聞いてほしいんです。