兵庫県のお客様から、工事が始まって数日経った頃にお電話をいただいたことがあります。「庭の物置、塗ってもらえないんですか」という内容でした。見積書を確認すると、そこには「外壁塗装工事一式」としか書かれておらず、物置やカーポートの支柱については触れられていなかったんです。お客様は当然、敷地内にあるものは全部含まれていると思い込んでいらっしゃいました。
業者側からすると「本体の外壁」という意味で見積もりを組んでいて、悪気があったわけではないのかもしれません。ただ、それを施主さんに伝えていなかったことが、後々の気まずさにつながってしまいました。
現地調査の際、営業担当の方はどうしても主屋の外壁面積や劣化状況に意識が向きがちです。物置やカーポート、ウッドデッキの塗装済みフェンスなどは、敷地の隅にあると視界に入りにくく、測量そのものが抜けてしまうことがあるんですよね。
もう一つ、これは私自身が前職で何度も感じたことなのですが、見積書のフォーマット自体が「建物一棟」を前提に作られていることも多いんです。母屋以外の構造物は別枠で扱う運用になっているのに、その説明が省略されたまま契約に進んでしまう。書類の仕組みとお客様の感覚の間に、ずれが生まれやすい部分だと思っています。
正直なところ、物置やカーポートを追加で塗ること自体は珍しい話ではありません。問題は、それが「工事が始まってから」判明することです。足場が既に組まれていて、職人さんのスケジュールも埋まっている状態で急に頼まれても、業者側も対応しづらい。結果として、お客様は割高な追加見積もりを提示されたり、今回は諦めて次回に持ち越したりすることになります。
先日も、似たようなご相談を受けました。倉庫の屋根だけ色あせが目立っていたのに、契約書には記載がなかったというお話でした。契約後に気づくと、選べる選択肢がぐっと狭くなってしまうんです。
敷地内に物置、カーポート、倉庫、フェンス、ウッドデッキなど「母屋以外の構造物」がある場合は、現地調査の段階で一つずつ指差しながら「これは見積もりに入っていますか」と確認していただくのが一番確実だと思います。口頭でのやり取りだけでなく、見積書に品目として書き出してもらうことも大切です。
塗るかどうかは予算次第で決めていただいて構いません。ただ、最初から選択肢として提示されているのと、後から気づくのとでは、心の負担がまったく違うと感じています。
外壁塗装の見積もりは、つい「外壁と屋根」だけに目が向きがちですが、敷地全体を見渡すという視点も同じくらい大切だと、私は前職からの経験を通じて感じてきました。物置やカーポートのような付帯構造物こそ、契約前の一言で防げる後悔だと思っています。同じような思いをされる方を、一人でも減らせたらと願っています。