外壁塗装の見積もりでお宅にお邪魔すると、駐車スペースの話になることがよくあります。屋根の位置、足場を組むスペース、車の出し入れ。そんな流れの中で「実は電気自動車、次の買い替えで検討してて」というひとことが出てくるんですよね。私自身、最初にこの話を聞いたときは正直ピンと来ていませんでした。充電設備の工事と外壁の塗装、別の業種の話だろうと思っていたからです。
ところがこれ、外壁に配線を通すルートや、充電コンセントを取り付ける位置によっては、外壁を後から削ったり穴を開けたりする工事になります。塗ったばかりの壁に穴を開ける。想像していただくと分かると思うのですが、これは業者にとってもお客様にとっても、あまり気持ちのいい話ではありません。
理屋根の工事とは違って、EV充電の配線は分電盤から駐車スペースまで壁を這わせることが多く、外壁を貫通させる箇所が必ず出てきます。外壁塗装を先に済ませてから数年後に充電器を後付けする場合、その貫通部分の周りだけ塗装がやり直しになったり、コーキングの打ち直しが必要になったりします。もちろん小さな範囲の補修で済むケースがほとんどですが、せっかく仕上げた外壁に手を入れるのは、お客様からするとやはり気になるところだと思うんです。
一方で、まだ導入時期が決まっていない段階で配線だけ先に通しておくというのも、それはそれで難しい判断です。将来の駐車位置が変わるかもしれませんし、充電器の規格が数年で変わっていくことも珍しくありません。だからこそ、「いつか」の話であっても、外壁塗装の打ち合わせのタイミングで一度共有しておく意味があると思っています。
数年前、埼玉県にお住まいのお客様から伺った話が忘れられません。外壁塗装を終えて一年ほど経った頃、電気自動車に買い替えることになり、充電設備の工事業者を別に手配されたそうです。その業者が配線ルートの都合で、塗ったばかりの外壁のちょうど目立つ面に穴を開けることになってしまいました。
補修自体は問題なく行われたのですが、色の合わせが微妙にずれてしまい、光の当たり方によってはその部分だけ少し違って見えるとお客様は感じていたそうです。「外壁塗装のときに一言相談しておけばよかった」と、電話口でぽつりとおっしゃっていたのを覚えています。誰が悪いという話ではなく、単純に情報が業者間で共有されていなかっただけなんですよね。
正直なところ、現地調査の段階でEV充電設備の予定まで細かくヒアリングしてくれる業者は、まだそれほど多くありません。だからこそ、お客様の側から「将来こういう予定があるかもしれない」と一言添えていただけると、それだけで違ってきます。配線ルートの候補だけでも事前に共有しておけば、その部分の下地処理や塗料の選び方に配慮してもらえることもあります。
先のことは分からない、という気持ちはよく分かります。ただ、外壁は一度きれいに仕上げたら何十年もそのままにしておきたいものです。数年後の暮らしの変化を、今のうちにひとこと伝えておく。それだけで防げる後悔が、確かにあると私は思っています。