高圧洗浄の水音、下地処理でコケや古い塗膜を削り落とす「ケレン」の音、養生シートを固定するときのバタバタという音。工事が始まってから、こんなに音があるとは思わなかったという声を、これまで何度もいただいてきました。特に朝一番の高圧洗浄は、水圧を上げるための機械音も加わって、窓を閉めていてもかなり響きます。
在宅ワークで日中にオンライン会議をされている方や、小さなお子さんのお昼寝の時間を大事にされているご家庭からも、似たようなご相談を受けたことがあります。普段の生活音とは種類が違うからだと思うのですが、慣れるまでの数日は落ち着かないという方も少なくありません。共働きで日中は家を空けているご家庭であれば気にならないことも、在宅の時間が長いご家庭では毎日のことになってきます。
長野県のあるお客様は、ご主人が退院されたばかりで、自宅療養を始めたタイミングと外壁塗装の工期が重なってしまったことがありました。契約自体は療養が始まる前に済んでいたそうで、工事の直前になって奥様から「今更ですが、朝の作業を少し遅らせてもらうことはできますか」とご相談をいただいたんです。
業者に事情を伝えると、快く対応してくれて、開始時間を1時間ほど遅らせ、特に音が大きい高圧洗浄の日は午後からの作業に変えてくれたそうです。奥様からは「最初から言えばよかったですね」と笑ってお話しされていましたが、私はこのやり取りを聞いて、契約の段階でこうした事情を伝える習慣があまり根付いていないのだと感じました。
工程は業者の都合だけで決まっているわけではありません。伝えれば変えられることは、意外と多いのです。
外壁塗装の打ち合わせというと、色や塗料のグレード、金額の話が中心になりがちです。ですが在宅で過ごす時間が長いご家族がいる場合は、その事情を最初の段階で業者に伝えておくことをおすすめしています。開始時刻の調整、休憩を多めに取る日の設定、特に音が響く工程だけ前もって知らせてもらうこと。こうした細かい配慮は、事前に相談すればほとんどの業者が対応してくれます。
先日も、ご高齢のお母様と同居されているお客様から、午後になると横になって休まれる時間があるので、その時間帯だけ屋根に上がる作業を避けてもらえないかというご相談をいただきました。業者側からすれば些細な調整でも、ご家族にとっては工事期間を穏やかに過ごせるかどうかを左右する、大きな違いになるのだと思います。
逆に言うと、こちらから伝えなければ、業者側は特に事情のない標準的な工事として進めてしまいます。悪気があるわけではなく、単に知らないだけなんですよね。
見積もりの打ち合わせで、こうした家庭の事情を話してみた時の反応も、業者を見極める一つの材料になると私は思っています。真摯に工程を考えてくれる担当者もいれば、話を聞き流してしまう担当者もいます。業界に身を置いて20年、数多くの現場に立ち会ってきましたが、細かな事情に耳を傾けられる会社ほど、工事全体の丁寧さにもつながっている印象がありました。
価格や工期だけでなく、そうしたやり取りのしやすさも、契約前に確かめておきたいポイントだと思います。