お客様とお話ししていると、「外壁なんてどこのお家も同じじゃないですか」とおっしゃる方が少なくありません。でも実は、外壁に使われている素材はいくつかの種類に分かれていて、それぞれ性質がまったく違うんです。代表的なものを挙げると、サイディング(窯業系・金属系・木質系などがあります)、モルタル(昔ながらのセメントを塗り固めたもの)、そしてALC板という軽量気泡コンクリートのパネルなどがあります。
近年建てられたお家のほとんどはサイディングを使っています。一方で、築30年以上のお家にはモルタルが多く、大型の集合住宅ではALCが使われていることもある。どれも「外壁」と呼ばれますが、塗装の方法も、使うべき塗料も、注意すべきポイントも、それぞれまったく違うんですよね。
前職で担当していた頃、今でも頭に残っているお客様がいます。愛知県にお住まいの方で、「塗り替えてから1年も経っていないのに外壁が浮いてきた」というご連絡をいただいたんです。
確認してみると、そのお宅はサイディングボードを使ったお家でした。ところが施工した業者は、モルタル壁用の下塗り材を使っていたんですね。サイディングとモルタルでは、下塗り材に求められる性質がまるで異なります。サイディングには塗膜が密着しやすいよう専用のシーラーやプライマーを使う必要があるのに、それをせずに施工してしまった。結果として、塗膜がボードから浮き上がってしまったわけです。
このお客様は価格を重視して選んだ業者だったとおっしゃっていました。その時、「素材に合った施工の大切さを事前にお伝えできていれば」と、悔しい気持ちになったのを今でも覚えています。
現在最も多い外壁素材であるサイディングには、板と板の間に「目地」と呼ばれる継ぎ目があります。この目地を埋めているシーリング材(コーキング)は、外壁塗装のタイミングで一緒に打ち替えるか、増し打ちするかを確認することが欠かせません。シーリングが劣化したまま表面だけを綺麗にしても、そこから水が入って壁の内部を傷めることがあるんですよね。
それでも「塗装の見積もりにシーリングが入っていなかった」というご相談を、今も定期的に受けます。業者によっては最初から含めない見積もりを出すこともある。見積書を受け取ったときに「シーリングの処理はどうなっていますか」と一言確認していただくだけで、後になってからの「そんな話は聞いていなかった」という状況を防げることがあります。
モルタル壁は、年月が経つとクラック(ひび割れ)が入りやすくなります。このひび割れを適切に補修せずに塗装をすると、また同じ場所にひびが出てきたり、雨水の侵入口になってしまったりすることがある。補修の方法にも、表面を埋めるだけのものから、弾力性のある材料を使って壁の動きに追従できるようにするものまで複数あります。どれが適切かはひびの幅や原因によって変わってくるものです。
ALC板は吸水性が高いという特徴があります。下塗り材の吸い込みが激しくなりやすく、丁寧に重ねて塗り込まないと仕上がりの塗膜が薄くなって耐久性に影響することもある。ALC板を扱い慣れた職人かどうかで、仕上がりの差が出てくることがあるんですよね。先日も、九州にお住まいのお客様から「業者が来たけれど、うちの外壁の素材をろくに確認しないまま話が進んだ気がする」というご相談をいただきました。そういうお話を聞くたびに、素材の確認がいかに大事かをあらためて感じます。
見積もりをもらったとき、ぜひ一度こう聞いてみてほしいんです。「私の家の外壁は何の素材ですか。それに合った塗料と工法を選んでいただいていますか」と。
この質問にすらすらと答えられる業者は、お客様のお宅をきちんと診た上で提案してくれている可能性が高いと感じています。逆に、素材の話をまったくせず、キャンペーンの話ばかりをしてくる業者には、少し立ち止まって考えていただきたいと思います。
外壁塗装は、塗料カタログだけで決まるものじゃないんです。今あなたのお宅の外壁が何でできていて、その素材が今どういう状態にあるかを見てくれる業者かどうか。そこが、工事後の満足度に大きく関わってくると、業界に身を置いて20年、ずっとそう思い続けています。