担当してくれる営業マンの人柄で業者を決める、というのは自然なことだと思います。話しやすい人、こちらの話をよく聞いてくれる人にお願いしたくなる気持ちは、私にもよく分かります。塗装工事は数十万円から百万円を超えることもある大きな買い物ですから、任せる相手が信頼できる人かどうかは、価格や塗料と同じくらい大事な要素です。
ただ、その「感じの良さ」の裏で、質問に対する答えが少しずつずれていたり、聞いたことにまっすぐ答えてもらえなかったりする瞬間があったとしたら。私はそこを見過ごさないでほしいと思っています。感じの良さと、説明の誠実さは、必ずしも同じものではないからです。
群馬県にお住まいのお客様から伺ったお話です。契約の少し前に、塗料のメーカーと商品名について質問したところ、担当の方の答えが訪問のたびに微妙に違っていたそうなんですね。最初は「気のせいかもしれない」と思い直し、雰囲気の良さに背中を押されて契約されたそうです。
けれど工事が終わってから、使われた塗料が最初の説明と違うものだったことに気づかれました。差額を返金してもらえたものの、「あのとき感じた引っかかりを、なぜ流してしまったんだろう」と悔やんでおられたのが、今でも心に残っています。お電話口で少し声を落としてそう話されていたのを、私は忘れられずにいます。
お客様からのご相談を伺っていると、違和感の中身にはいくつか共通したパターンがあるように思います。同じ質問への答えが訪問のたびに変わる。書面での回答を避けて口頭で済まそうとする。今日決めないと価格が変わる、といった形で決断を急がせる。こうした場面に、共通して漂う空気があるんですよね。
もちろん、こうした様子がある業者がすべて悪質というわけではありません。担当者の説明が不慣れなだけということもありますし、単純な言い間違いということもあるでしょう。ただ、そうした説明の揺れが重なったときに覚える感覚を、なかったことにしないでほしいのです。
先日も、似たようなご相談を受けました。「担当者はとても丁寧なんですが、質問への答えが毎回少しずつ違っていて」というお話でした。私がお伝えしたのは、その場で契約書にサインをせず、一度持ち帰って考える時間を作ってほしいということです。そして、気になった点をもう一度、今度は書面やメールで質問してみてほしいとお願いしました。
その場の雰囲気に流されず、一晩置いてから読み返す。あるいは、別の業者にも同じ質問をぶつけてみる。それだけで、答えの一貫性というものが見えてくることがあります。業界に身を置いて20年になりますが、良い業者ほど、こうした持ち帰りの申し出を嫌がらない傾向があるように感じています。
前職で施主と業者のマッチングを担当していた頃、契約直前まで進んでいた話が、施主側の「なんとなく気になって」という一言で見送りになったことが何度もありました。当時は正直なところ、もったいないと思うこともあったのですが、今振り返ると、あの違和感は的を射ていたケースが多かったように思います。
感じの良さに背中を押されるのは自然なことです。でも、それとは別に心の片隅で引っかかった感覚があるなら、その両方を大事にしてほしいと私は思っています。急がず、聞き直し、書面で確かめる。そのひと手間が、後悔を防ぐ小さな盾になってくれるはずです。