外壁の色を決める場面で、奥様は思い切って明るいベージュやツートンにしたいとおっしゃるのに、ご主人は「グレーで十分だろう」と一歩も譲らない。こういう場面、前職でも本当によく見てきました。どちらも家を長く大切にしたいという気持ちは同じなんですけれど、そこに向かう道筋が違うんですよね。
奥様は日々家にいる時間が長く、外から見た印象や近所の目を気にされることが多い印象です。一方でご主人は費用や将来の売却のしやすさといった、少し先の話を基準に考えている方が多い気がします。どちらが正しいというものでもなく、見ている景色が違うだけなんです。
色の話が落ち着いても、今度は業者選びで温度差が出ることがあります。奥様の方は営業さんの人柄や対応の丁寧さを重視して「もうここでいいんじゃない」と早めに決めたがる。対してご主人は複数社の見積もりを取り比べて、数字を並べてじっくり検討したいタイプ。これもまた、片方が急かしているように見えて、片方が慎重すぎるように見えて、ちょっとした喧嘩の種になってしまうことがあります。
営業マン側からすると、決定権がどちらにあるのか分からないまま話を進めてしまい、後になって「実は主人がまだ納得していなくて」と契約直前で振り出しに戻る、というのも珍しくありませんでした。
前職で担当したある戸建てのお客様のことを、今でもよく思い出します。奥様が先に業者を決めてしまい、契約書にサインする段になって初めてご主人に色サンプルを見せたところ、「こんな色になるなんて聞いていない」と大きな声になってしまったことがありました。結局その場では契約は流れ、後日改めてご夫婦そろって色見本と現地確認に立ち会っていただいて、ようやく落ち着いた仕上がりの色に決まったんです。
あのとき感じたのは、外壁塗装は「誰か一人が決めて進める工事」ではなく、「暮らす人みんなが納得して進める工事」なんだということでした。片方だけで進めてしまうと、工事が終わってからの方がしこりが残ってしまうこともあるんですよね。
実際にご夫婦で意見が割れたときにお勧めしているのは、色見本を家の外壁に当てて、朝・昼・夕方と時間帯を変えて一緒に見てもらうことです。光の当たり方で印象がかなり変わりますし、二人で同じものを見ながら話すと、不思議と意見が近づいていくことが多いように思います。
業者選びについても、片方が窓口になって全部進めるのではなく、最初の現地調査や最終見積もりの説明だけは二人でそろって聞く、という形を取るだけでも、後からの「聞いていない」というすれ違いはかなり減らせます。小さなことのようですが、これがけっこう効くんです。
外壁塗装は決して安い買い物ではありませんし、何年も毎日目にするものだからこそ、家族の中で意見が分かれるのは自然なことだと思っています。大切なのは、どちらかの意見を我慢して通すのではなく、二人で同じ情報を見ながら決めていくことなんじゃないかと感じています。