静岡県のあるお客様から伺ったお話です。工事も中盤に差し掛かり、担当者とのLINEでのやり取りにもすっかり慣れてきた頃、「振込先の口座が変わりましたので、こちらへお願いします」というメッセージが届いたそうです。文面は普段のやり取りと変わらない調子で、会社名も担当者の名前もそのまま。お客様は特に疑うこともなく、送金の準備を始めかけていました。
ただ、ふと「そういえば契約のときに聞いていた口座と違うな」と気づいて、契約書に書かれていた会社の代表番号に電話をかけたのだそうです。すると、そのような連絡は一切していないという返事が返ってきました。私はこの話を聞いたとき、背筋が少し冷たくなったのを覚えています。もし電話をかけていなければ、と考えてしまうんですよね。
外壁塗装の支払いは、契約時・着工時・完工時など、何度かに分けて発生することが多い業界です。お客様にとってはすでに何度かお金のやり取りを経験しているタイミングでもあるので、途中で条件が変わっても「そういうこともあるのか」と受け止めてしまいやすいのだと思います。忙しい毎日の中で、工事中は現場に立ち会えない日も多く、確認の手段がメッセージのやり取りだけに偏ってしまうことも背景にあるように感じています。
本来、まともに事業を続けている業者であれば、振込先を工事の途中で変更すること自体がまれですし、変更するとしても電話や対面で一言添えるのが自然な流れです。文字だけで、しかも急かすような調子で送金先の変更を伝えてくる連絡には、立ち止まってほしいと思っています。
お客様の中には「せっかく信頼して契約したのに、いちいち確認するのは失礼なのでは」と感じる方もいらっしゃるようです。ですが、私はそうは思いません。契約書に記載された代表番号へかけ直して確認することは、業者への不信ではなく、双方を守るための当たり前の手順だと考えています。
実際、きちんとした会社であれば「確認の電話をいただいて安心しました」と言ってくれるはずです。逆にその一本の電話を嫌がるようなら、それこそ注意が必要な相手だと思っています。振込先や金額に関する連絡は、メッセージだけで完結させず、必ず声で確かめる。これだけで防げるトラブルは、思っている以上に多いのではないでしょうか。
在宅ワークが増えたとはいえ、日中ずっと家にいられるお客様ばかりではありません。工事の様子はLINEの写真で確認し、支払いの連絡もオンラインで済ませる。便利になった分、顔の見えないやり取りが増えているのも事実です。業界に身を置いて20年、13,000件以上のお客様と業者のマッチングに携わってきましたが、こうした形のトラブルは正直なところここ数年で初めて耳にするようになったものです。
便利さを手放す必要はないと思うのですが、お金が動く場面だけは、昔ながらの「電話で一言」を忘れないでいてほしい。同じ思いをするお客様を一人でも減らしたいという気持ちで、今日はこの話をお伝えしました。