前職で窓口をしていた頃、山梨県のお客様から「窓を開け閉めするたびにベタベタする」というお電話をいただいたことがあります。工事が完了してから数週間経っていて、業者に連絡しても「経年で取れます」と言われたまま、そのままになっていたそうなんです。
実際に見せていただくと、サッシのゴムパッキンの部分に養生テープの粘着剤がこびりついていて、そこに砂埃を巻き込んで黒ずんでしまっていました。ご本人は「たかがテープの跡だから」と強く言えなかったとおっしゃっていて、その遠慮が結果として長引かせてしまったんだなと、今でも印象に残っているお話です。
後日、別の業者に相談してもらったところ、専用の溶剤で拭き取れば数分で落ちる程度のものだったそうです。ただ、その一言を最初の業者から聞けなかったことで、お客様は数ヶ月も不快な思いを抱えたまま過ごされることになってしまいました。
養生テープは紫外線や熱に長くさらされると、粘着剤の成分が変質して糊残りしやすくなります。夏場に直射日光が当たり続ける面や、天候不順で工期が延びて養生期間が想定より長引いた現場ほど、こうしたことが起きやすい印象があります。剥がすタイミングと、その丁寧さによって結果は大きく変わってくるので、職人さんの経験や作業の余裕が地味に響いてくる部分でもあるんですよね。
サッシのゴムパッキンや樹脂製の窓枠は、ガラスや金属に比べて粘着剤が染み込みやすい素材だと言われています。剥がした直後はきれいに見えても、数週間してから跡が浮き出てくることもあり、完了検査の時点では気づきにくいという厄介さがあります。
玄関ドアの取っ手まわりや、ポストの投函口といった手が触れる場所も同じように糊残りが起きやすい箇所です。目線の高さから離れた場所ほど見落とされがちで、気づいた時には汚れが定着してしまっていることも珍しくありません。
見積もりの段階で「養生の範囲」や「使うテープの種類」まで説明してくれる業者は、それほど多くないというのが実感です。ただ、完了後のチェック項目に窓まわりの養生跡の確認が含まれているかどうかを聞いてみると、その業者が細部までどのくらい気を配っているかの一つの目安になると思っています。
もし工事後に跡が残っていたら、「経年で取れます」という説明だけで終わらせず、いつまでに、どんな方法で対応してもらえるのかを書面やメッセージの記録として残しておくことをお勧めします。口約束のままにしてしまうと、担当者が変わった時にうやむやになってしまったケースを、これまで何度か見てきました。
完了検査に立ち会える時間があるなら、外壁だけでなく窓やドアまわりも一緒に指でそっと触ってみてください。ベタつきがあるかどうかは、見た目以上に手触りの方が分かりやすいものです。
外壁の塗り替え自体には大きな不満がなくても、こうした細部の後始末次第で工事全体への印象が変わってしまうことがあります。長野県のお客様が「壁はきれいになったのに、窓を触るたびに嫌な気持ちになる」とおっしゃっていたのが忘れられなくて、満足度というのは仕上がりの美しさだけで決まるものではないんだなと、あらためて考えさせられました。
業界に身を置いて20年近く経ちますが、こういう小さな部分にこそ、業者の姿勢が表れるように感じています。だからこそ弊社では、見積もりの時点で気になることは遠慮なく聞いていただきたいと、いつもお伝えしています。
大きな工事の陰に隠れがちな、こうした細部への配慮こそが、後々の満足度を左右するのだと思っています。