前職で担当したお客様に、香川県の平屋にお住まいの方がいらっしゃいました。ご夫婦二人暮らしで、建坪はそれほど大きくない家でした。「二階がないんだから、足場も低いし、塗る面積も小さいでしょう」とおっしゃっていて、私も最初はそう思っていたんです。ところが実際に現地調査へ行った職人さんの報告を聞くと、思っていたより金額がかさむ内容でした。
お客様は少し不満そうな顔をされていて、その表情を今でも覚えています。悪気があって高く見積もったわけではないのに、説明が足りないと、こういう誤解を生んでしまうんですよね。
平屋は一般的に一戸あたりの延べ床面積が二階建てより小さい家が多いのですが、屋根の面積は必ずしも小さいとは限りません。二階建てなら二つのフロアに分かれている床面積が、平屋では一つの屋根の下にすべて収まっています。つまり、屋根の面積だけで見ると、同じ延べ床面積の二階建てよりも広くなるケースがあるんです。
勾配のある屋根や、複雑な形状の屋根だと、塗る面積も職人さんの手間も増えます。外壁だけを見て「小さい家だから安い」と考えてしまうと、屋根の分でずれが出てしまう。これは業者が意図的に高くしているわけではなく、単純に構造上そうなりやすいという話なんです。
足場も、階数が低いからといって単純に安くなるわけではありません。軒が深い家や、庭木・エアコン室外機が建物のすぐそばにある家だと、足場を組む位置を工夫しなければならず、かえって手間がかかることもあります。
あの香川のお客様の家も、隣家との距離が近く、足場を組める幅が限られていました。結果として、通常より部材を多く使う組み方になっていたそうです。職人さんから話を聞いて、私自身も勉強になりました。
ここまでお伝えしたことは、平屋の外壁塗装が高くつくと言いたいわけではありません。実際、延べ床面積の分だけ外壁面積は小さくなりますから、二階建てより費用を抑えられることも多いです。
お伝えしたいのは、「平屋だから」「小さいから」という言葉だけで金額を予想せず、屋根の面積や足場の組み方まで含めた見積書をきちんと確認してほしいということです。項目ごとに内訳を出してもらえば、なぜその金額になるのか納得できますし、複数の業者を比べるときの物差しにもなります。
あのお客様には、後日あらためて屋根と足場の内訳を説明する時間をいただきました。最初は不満そうだったお客様も、「そういうことなら分かります」と納得してくださって、少しほっとしたのを覚えています。