兵庫県のあるお客様から、こんなご相談をいただいたことがあります。台風の後に業者から「火災保険で足場代まで無料になりますよ」と声をかけられ、申請を任せて工事も終え、保険金も無事に振り込まれた。そこまでは順調だったのですが、半年ほど経ってから保険会社の担当者を名乗る方から電話があり、「当時の被害状況を確認させてください」と言われたそうなんですよね。工事はもう終わっているのに、今さら何を確認されるのだろうと、お客様は本当に戸惑っていらっしゃいました。
保険会社は、支払った保険金が適正だったかを事後的にサンプリング調査することがあります。特に、同じ時期・同じ地域で似たような申請が集中した場合、確認の対象になりやすい傾向があるようです。工事自体に何の問題もなくても、書類の内容と現場の状態を突き合わせる連絡が来ることがある、というだけの話ではあるのですが、知らずに電話を受けると身構えてしまうものだと思います。
業界に身を置いて長くなりますが、火災保険を使った外壁塗装の申請を、施主様がご自身で行うケースは実はそう多くありません。多くの場合、業者や申請代行の会社が書類作成から保険会社とのやり取りまでを引き受けています。それ自体は悪いことではないのですが、長野県のお客様が「申請の中身をよく分からないまま任せていたので、保険会社に聞かれても答えられなかった」とおっしゃっていたのが、今でも心に残っています。
被害箇所の写真がいつ撮られたものか、被害の原因は本当にその台風によるものか。こうした点を、施主様ご自身が説明できないと、保険会社とのやり取りが長引いてしまうことがあります。任せることが悪いのではなく、任せた内容を一度は自分の言葉で説明できるようにしておく、というだけで、後の安心感がずいぶん違うのではないかと感じています。
この十数年、施主様と業者のマッチングに携わる中で感じてきたのは、火災保険の申請に手慣れた業者ほど、被害箇所の写真や見積書の書き方が丁寧だということです。逆に、保険適用をとにかく強調して契約を急がせるタイプの業者ほど、後々の書類が雑になっている場合が見受けられました。
先日も、埼玉県のお客様から「申請書類の控えをもらえていなかった」というご相談をいただきました。控えがあれば、保険会社から確認が来たときにもすぐ照らし合わせられます。契約前に「申請書類の控えはいただけますか」と一言添えるだけで、後の安心につながるように思います。
火災保険は、経年劣化した外壁を新品同様にするための制度ではなく、台風や雹といった自然災害による被害を補償するためのものです。この前提を業者と施主様の双方が共有できていないと、申請内容と実際の被害にズレが生じ、それが調査のきっかけになることもあります。私自身、前職で数多くの現場を見てきましたが、被害と関係のない劣化部分まで一緒に申請してしまい、後になって説明に困ったお客様も複数件ありました。