お子さんが独立された後に外壁塗装のご相談をくださるご夫婦に、ここ数年よくお会いするようになりました。工事そのものよりも、これからの暮らしをどう組み立てていくかを一緒に考えるような時間になることが多くて、今日はそのお話を書いてみたいと思います。
長野県のあるご夫婦から伺った話です。以前の色選びは「子ども部屋の窓から見える面をどうするか」「自転車置き場の汚れが目立たない色にしたい」というように、家族全員の生活動線を基準に決めていたそうです。ところがお子さんが二人とも独立され、久しぶりに色見本を広げてみたら、どこから決めていいか分からなくなったと笑っておられました。誰かのための色ではなく、お二人が毎日見て気持ちがいい色でいいんですよね、とお伝えしたら、少し肩の力が抜けたような表情をされていたのを覚えています。
子どもの独立と外壁塗装の時期が重なる背景には、教育費が一段落してようやく家のことにお金を回せるようになった、という現実的な事情もあります。前職で担当していた頃から、退職金を待つべきか、その前に劣化を止めておくべきかで悩まれる方を何人も見てきました。
ここで難しいのは、外壁の傷みは待ってくれないということです。チョーキングやひび割れが進んでから工事を先延ばしにすると、下地補修の範囲が広がり、結果として費用が膨らむケースが複数件ありました。資金計画上のベストなタイミングと、建物のコンディション上のベストなタイミングは、必ずしも一致しません。私たちがヒアリングの中で「今のご予算感」と「あと何年住む予定か」を両方お聞きするのは、このずれを埋めるためなんです。
夫婦二人の暮らしになったタイミングは、家そのものの将来を考え直す機会にもなります。このまま住み続けるのか、いずれ子ども世帯と同居するのか、あるいは将来的に住み替えるのか。外壁塗装のご相談の中で、そうした先々の話が自然と出てくることは少なくありません。
業界に身を置いて20年になりますが、こういう相談は工事の見積もりだけでは答えが出ない部分だと感じています。10年後も住み続けるつもりなら遮熱性能や耐久年数を重視した仕様を、将来的に手放す可能性があるなら過度に凝った仕様よりも清潔感のある標準的な色を選ぶ方が結果的に満足度が高かった、という傾向を見てきました。どちらが正解ということではなく、ご夫婦の中で一度言葉にしてみることに意味があるのだと思います。
先日も、埼玉県のお客様が「この家を終の棲家にすると決めたので、思い切って明るい色にしました」とおっしゃっていました。子育て期には無難な色を選びがちだったけれど、これからは夫婦二人の好みを優先していいと思えた、という言葉が印象に残っています。
外壁塗装は建物のメンテナンスであると同時に、住む人の暮らし方が変わる節目に立ち会う仕事でもあるんですよね。子育てが一段落したご夫婦の色選びに付き合わせていただくたびに、そのことを実感します。
工事の話だけでなく、これからどう暮らしていきたいかという話にも耳を傾けられる存在でありたいと思っています。もし色選びで昔の基準から抜け出せずに迷っている方がいたら、一度その基準そのものを見直してみることをお勧めしたいです。
見積もりの数字だけを比べて業者を選ぶ方も多いのですが、こういう節目の相談にどれだけ付き合ってくれるかも、実は大事な判断材料だと思います。子どもの成長に合わせて家を選んできたご家庭が、今度はお二人のために家を整え直す。そのお手伝いができることを、この仕事のやりがいのひとつに感じています。