前職に在籍していた頃のことを、今でもよく思い出します。口コミ評価がとても高い業者を通じて工事が完了したお客様から、ある日1本の電話をいただきました。塗装の仕上がりについてどうしても納得がいかない、という内容でした。その業者は口コミサイトで星4.8を誇っていて、コメント欄には「担当者の説明がとても丁寧で安心できた」「挨拶回りもきちんとしていた」という声がずらりと並んでいたんです。
電話口でお客様がおっしゃったのは「あんなに評判が良かったのに、なぜこうなるのか」という困惑と、少しの悲しさでした。その言葉が、当時の私には胸に刺さりました。後から状況を確認していくうちに見えてきたことがあります。口コミに書かれていたのはほとんど「担当営業マンの対応の丁寧さ」や「現場監督の挨拶の姿勢」への評価だったんですよね。実際に塗料を塗る職人さんの腕前は、また別の話なのです。
ネット上の口コミというのは、書いた人の「感じ方」の記録です。対応が良かった、説明が分かりやすかった、時間通りに来てくれた——こうした印象はもちろん大切ですし、その会社がどんな姿勢でお客様と向き合っているかの一端は伝わります。ただ、施工の品質——どれだけ丁寧に下地を処理したか、塗り回数はきちんと守られたか、塗料の希釈率は正しかったか——そういった部分は、口コミには出てきません。
以前、埼玉県のあるお客様から「口コミで選んだ業者で3年も経たずに塗膜が浮いてきた」というご相談を受けたことがあります。工事中の写真もほとんど残っておらず、業者への連絡も対応が遅いとのことで、お客様はとても困っていらっしゃいました。「口コミを信じすぎた」とおっしゃっていたその言葉が、今も頭から離れません。あの出来事が、私が今の仕事を始めた理由のひとつになっています。
口コミサイトで高評価を受けている業者が、施工品質も必ず高いというわけではない。業界に長く身を置いてきて、これは繰り返し感じてきたことです。
業界の内側に長くいると、見えてくることがあります。施工完了後にお客様へ口コミ投稿をお願いする業者は、珍しくありません。悪意があるわけではないのですが、満足したお客様の声は積み上がりやすい一方で、問題があった方の声は表に出にくい。この構造的な偏りは、どうしても生まれてしまうものなんですよね。
「口コミの星の数」は、施工が良い業者かどうかよりも、「声を上げてくれたお客様が多かった業者かどうか」を反映していることが少なくない、と私は感じています。それを責めることはできません。ただ、利用する側が少しだけ意識しておくことで、口コミとの付き合い方は変わってくるはずです。
口コミを参考にしてはいけない、と言いたいわけではありません。入口として活用することは良いことだと思います。
ただ、私がお客様にお伝えしたいのは「実際に会って話してみること」の大切さです。見積もりのために現地調査へやってきた業者が、外壁をどう見るか。触れて確かめながら「ここのコーキングが傷んでいますね」「この部分はカビが出ているので下地処理が必要です」と具体的に指摘してくれるか、ざっと眺めるだけで金額を出してくるか。その違いは、口コミでは絶対に見えてきません。実際に会ってみて、初めて感じ取れるものです。
複数の業者から見積もりを取ることをお勧めしているのも、こうした理由からです。数社の現地調査を経験することで、業者ごとの「外壁の見方」の違いが自然と分かってきます。どの業者が何を丁寧に確認しているか——その比較の中にこそ、口コミには出てこない情報が詰まっているんですよね。弊社がお客様の比較をお手伝いしているのも、そういう気持ちからです。口コミは入口として。でも最後は、ご自身の目で確かめていただきたいと思っています。