前職で施主様と業者さんの間に入っていた頃、工事中のお客様からこんなお電話をいただいたことがあります。
「職人さんがお昼休みに、うちの庭先でタバコを吸っているんです。洗濯物に匂いがつくし、子どもも外で遊ぶので気になって……。でも、毎日暑い中で頑張ってくれている方に、注意なんてできなくて」
受話器越しの声が本当に申し訳なさそうで、今でもよく覚えています。お客様は何も悪くないんですよね。それなのに、ご自宅でいちばん気をつかっていたのがお客様のほうだった。私はそこに、業界として向き合わなければいけない課題があると感じました。
外壁塗装の現場には、塗料やシンナーなど火気に注意の必要なものが置かれます。吸い殻の後始末が雑だと、植木鉢の受け皿や側溝に残ってしまうこともあります。
実際に私が見てきた中でも、工事が終わってから花壇の土の中に吸い殻がいくつも見つかり、お客様がとてもがっかりされたことがありました。仕上がりはきれいだったのに、最後の印象がそれで塗り替わってしまう。もったいないことです。
匂いの感じ方は人それぞれですし、ご家族に体調の優れない方や小さなお子さん、ペットがいれば、気になって当然だと思います。
一方で、職人さんの名誉のためにお伝えしたいこともあります。
私の知る限り、丁寧な仕事をする会社ほど「お客様の敷地では吸わない」「休憩は車の中か決められた場所で」「吸い殻は必ず持ち帰る」といった決まりを、会社として職人さんに伝えています。現場を任せる以上、その家の暮らしを預かっている、という意識があるんですね。
ですから、喫煙のことを聞くのは失礼でも何でもありません。むしろ「そこまで考えてくれていますか」という確認は、業者さんの姿勢を知るよい手がかりになると、私は考えています。
おすすめしたいのは、工事が始まる前、契約や打ち合わせの段階で聞いてしまうことです。
「工事中の休憩やタバコは、どのようにされていますか」
この一言だけで十分です。始まる前なら、誰かを注意する形になりません。担当の方から職長さんへ、会社のルールとして伝えてもらえます。
もし工事が始まってから気になった場合も、職人さんに直接ではなく、営業担当や現場管理の方に「家族が気にしていて」と相談する形がよいと思います(直接言うのが平気な方は、もちろんそれでも構いません)。言い方ひとつで、お互い気持ちよく工事を終えられるものです。
外壁塗装は、数週間にわたって他人がご自宅の周りで働く、少し特別な工事です。だからこそ「これくらいで言うのは」と飲み込んでしまう方が多いのだと思います。
弊社では、加盟店さんと現場での配慮についても話をするようにしています。工事の出来だけでなく、工事中の毎日も安心して過ごしていただきたい、という気持ちからです。