前職で、千葉県のあるお客様からお電話をいただいたことがあります。翌日に現地調査を予定していたのですが、天気予報は一日中雨。「業者さんも大変でしょうし、延期したほうがいいですよね」と、とても気を遣われていました。
そのとき担当していた業者さんに相談すると、返ってきたのは「いえ、むしろ伺わせてください」という言葉でした。
実際に伺ってみると、晴れた日には分からなかったものが次々と出てきたそうです。北側の窓の下だけ、壁の色がじわっと濃くなっている。雨樋の継ぎ目から水が細く垂れて、基礎のあたりに跳ね返っている。お客様は「何年も住んでいるのに、雨の日に外をじっくり見たことはなかった」と驚いていらっしゃいました。私はこの話を聞いて、ずっと心に残っているんです。
乾いた外壁は、ひび割れや色あせこそ目に入りますが、水がどこを通って、どこで止まっているのかまでは教えてくれません。
雨の日は違います。水を吸いやすくなった部分だけ色が変わって見えたり、コーキングの切れ目に水がにじんでいたり。雨樋があふれて壁を伝う、ベランダの排水口に水が溜まっている、といった「水の通り道」の問題もそのまま見えます。塗装で解決できることと、塗装の前に直すべきことを分けて考えるうえで、これはとても大事な手がかりになると私は思っています。
もちろん、雨の日だから全部が分かるわけではありません。屋根に上がるのは危ないので、晴れた日に改めて確認することもあります。ただ「雨だから無駄足」ということは、まずないんですよね。
業界に身を置いて長くなりますが、雨の日の現地調査には、業者さんの考え方がよく表れると感じています。
傘を差しながら、樋の下や窓まわりをしゃがみ込んで見てくれる方。「今日は雨なので、ここの水の流れを写真に撮っておきますね」と言ってくれる方。逆に、玄関先で少し見ただけで「晴れたらまた来ます」と帰ってしまう方もいます(もちろん安全上の判断で引き上げることもあるので、一概に悪いとは言えませんが)。
私は、雨の日の様子を説明してくれる業者さんほど、工事中の雨対策にも気を配ってくれる傾向があると感じてきました。データで断言できる話ではありませんが、多くの現場を見てきた実感として、そう思っています。
もし雨の日に調査が入ったら、ぜひ少しだけ外に出て、業者さんと一緒に家のまわりを歩いてみてください。
見てほしいのは、壁の色がまだらに濃くなっているところ、雨樋から水があふれたり垂れたりしているところ、窓やベランダの下、それから室内の天井や窓枠のシミです。気になったら、その場で「ここはどうですか」と聞いてかまいません。聞かれて嫌な顔をする業者さんなら、それも一つの判断材料になると思います。
それと、ご自身のスマホで写真を一枚撮っておくのもおすすめです。晴れた日に比べると、その写真が見積もりの説明を受けるときに役立つことがよくあります。