前職で窓口をしていた頃、10年保証の書面を大事に保管していたお客様から相談を受けたことがあります。工事をした会社に連絡すると、電話番号が使われていませんというアナウンスが流れたそうです。書面自体は本物でした。ただ、その保証を守る主体である会社がなくなってしまえば、紙切れ同然になってしまう。業界に身を置いていると、これは決して珍しい話ではないんですよね。
自社保証というのは、極端に言えば「その会社が存続している間だけ有効」という性質を持っています。体力のある会社なら問題ありませんが、外壁塗装業界は新規参入と撤退の入れ替わりが激しい業界でもあります。保証書に書かれている年数と、その会社が実際に存続する年数が一致するとは限らない。この前提を、契約前に知っておいてほしいと思っています。忘れられないのは、そのお客様が「紙は残っているのに、頼れる相手がいない」とつぶやいていたことです。
一方で、リフォーム瑕疵保険という制度をご存知でしょうか。国が指定する住宅専門の保険法人に施工会社があらかじめ加入しておく仕組みで、万が一その施工会社が倒産や廃業をしてしまっても、保険法人がお客様に対して直接、補修費用を支払ってくれるというものです。
保証の主体が会社ではなく、第三者の法人になる。これが一番大きな違いです。
もちろん、この保険に加入していない業者が悪いというわけではありません。加入には施工会社側の審査や保険料の負担もありますし、小規模な会社ほど二の足を踏むのも理解できます。ただ、見積もりの場で「保証年数」だけでなく、「その保証はどこが担保しているんですか」と一言聞いてみる。それだけで、業者の体制や姿勢がある程度見えてくるはずです。保険法人の審査を通っているというのは、それだけで一定の裏付けにもなります。
長野県のあるお客様から、契約直前にお電話をいただいたことがあります。見積書に「自社保証10年」とだけ書かれていて、それが第三者保険なのか自社保証なのか判断がつかない、という内容でした。担当の方に確認してもらったところ、案の定、自社保証のみだったそうです。結果としてそのお客様は、別の業者が提示していた第三者保険付きのプランを選ばれました。
保証内容を比較する時、年数の長さだけに目を奪われがちです。ですが、20年保証と書いてあっても、その裏付けが会社の体力だけであれば、10年の第三者保険付き保証より心もとない場合もある。年数と裏付け、両方を見る視点を持っていただきたいです。実際、保証年数を競うように長くしている業者の見積もりを見比べたことがありますが、肝心の裏付けについては何も書かれていないケースも見てきました。
保険法人に加入している施工会社であれば、たいてい見積書や契約書に保険法人名や登録番号が記載されています。わからなければ、遠慮せず「保険証書を見せてください」と伝えていいのです。誠実な業者であれば、その場できちんと見せてくれますし、答えに詰まるようであれば、それも一つの判断材料になるのではないでしょうか。
業界歴20年の中で、保証書そのものは立派でも、いざという時に頼れなかったという相談を何度も受けてきました。紙の年数より、それを支える仕組みを見てほしい。今回はそんな思いでこの話を書きました。工事の前、契約書にサインをする前に、ほんの少しだけ確認の手間をかけてもらえたらと思います。それだけで、工事が終わった何年も先の安心感がまるで違ってくるはずです。