前職で外壁塗装の窓口をしていた頃、埼玉県のお客様からお電話をいただいたことがあります。1階がご自宅、2階と3階が賃貸のお部屋という建物で、外壁塗装の見積もりを取ったものの、どこまでが生活費でどこからが不動産経営の経費になるのか分からず困っているというご相談でした。
一戸建てのオーナー様なら全額を家計として考えればいいですし、アパート一棟のオーナー様なら全額を経費として考えられます。ところが賃貸併用住宅は、ひとつの建物の中に暮らしと経営が同居しているぶん、線引きが難しいのです。業界に身を置いて20年になりますが、こういうご相談は年々増えている気がします。特に都市部では土地を有効に使う目的で建てられることが多いので、これから同じ悩みを抱えるオーナー様はもっと増えるだろうと感じています。
私は税理士ではありませんので、按分の計算方法そのものをお伝えする立場にはありません。ただ現場を見てきた者として言えるのは、床面積の割合で分ける考え方が一般的だということと、それをどう扱うかは最終的に顧問の税理士さんに判断していただくべきだということです。
業者側にできる誠実な対応は、見積書を一式でまとめてしまわないことだと思っています。外壁のどの面が自宅部分で、どの面が賃貸部分にあたるのか、足場代や高圧洗浄費まで含めて内訳を分けて提示する。それだけで、オーナー様が確定申告のときに迷わずに済むことが多いんですよね。
逆にいえば、見積もりの時点で「自宅部分と賃貸部分を分けて出してもらえますか」とひとこと聞いてみるだけで、業者の姿勢もある程度分かるのではないかと思っています。快く対応してくれる業者もいれば、面倒そうな顔をする業者もいる。そこに、その後の付き合いやすさが表れる気がするんです。
賃貸併用住宅の外壁塗装には、ご自宅の工事にはない気苦労もあります。足場を組めば入居者様の窓の外に養生シートが張られますし、工事音や職人の出入りも、暮らしている方の日常に直接影響します。
先日も、あるオーナー様が「入居者に何て説明したらいいか分からなくて、結局工事の一週間前に慌てて手紙を書いた」とおっしゃっていました。工事日程が決まった時点で、業者から配布用の案内文をもらえていれば、あんなに慌てずに済んだはずなんです。工事に慣れている業者ほど、こうした案内文のひな形をあらかじめ持っていることが多いように感じます。
先ほどの埼玉県のお客様は、結局そのときは見積もりを一式のまま契約してしまいました。工事が終わってから顧問の税理士さんに相談したところ、経費として計上できる部分の根拠資料が足りないと指摘され、業者に頼み込んで工事後に内訳書を作り直してもらうことになったそうです。
「最初から聞いておけばよかった」と電話口でおっしゃっていた声を、今でも覚えています。工事が終わったあとに内訳を作り直すのは、業者にとっても手間ですし、オーナー様にとっても余計な時間がかかってしまう。契約前のひと手間が、あとの安心につながるのだと思います。
最後にお伝えしたいのは、賃貸併用住宅の施工実績がある業者かどうかも、選ぶときの目安になるということです。自宅だけの工事に慣れている業者と、入居者対応や按分の相談に慣れている業者とでは、見積もりの出し方から現場での配慮まで、細かな違いが出てくるものです。
弊社にご相談くださるお客様の中にも、賃貸併用住宅のオーナー様は年々増えてきています。暮らしと経営が同居する建物だからこそ、外壁塗装も一戸建てと同じ感覚で任せきりにせず、按分や入居者対応まで含めて相談できる業者を選んでいただきたいと思っています。