前職時代にはあまり耳にしなかった相談が、最近増えてきたと感じることがあります。年金生活に入られた方から「自宅を担保にお金を借りる方法があると聞いたのですが」と切り出されることが増えました。いわゆるリバースモーゲージです。自宅を手放さずに済み、存命中は利息だけの返済で済む商品が多いので、外壁塗装のようなまとまった出費を前に検討されるお気持ちはよく分かります。
ただこの仕組みは、外壁塗装の見積もりそのものとは別の注意点をいくつも抱えています。
以前、長野県にお住まいのお客様から、外壁塗装の相談と合わせてリバースモーゲージのお話を伺ったことがあります。ご主人が独断で手続きを進めてしまい、金融機関から「推定相続人の同意書」を求められた段階になって、初めて息子さん夫婦がそのことを知ったのだそうです。息子さんからすれば、将来自分が相続するはずの実家に借り入れが乗る話ですから、驚かれるのも当然です。幸い話し合いで解決したと伺っていますが、「先に一言相談してくれれば」という息子さんの声を、お客様はしばらく気にかけていらっしゃいました。
外壁塗装そのものは無事に終わったのですが、お金の入り口の話を後回しにしたことで、工事の満足感まで少し曇ってしまったような印象が、私の中には残っています。
リバースモーゲージには、資金使途をリフォームなど住宅関連に限定しているタイプと、比較的自由に使えるタイプがあります。多くが変動金利型で、契約時の説明では「今の金利なら」という話が中心になりがちです。外壁塗装の予算だけを見て契約を急ぐのではなく、将来の金利が上がった場合の負担や、存命中の返済がどう変わっていくのかを、時間をかけて確認していただきたいのです。
業者の見積もりは何社か比べられるのに、借り入れの条件は一つの金融機関の説明だけで決めてしまう方も、お見受けします。
外壁塗装の色選びやプラン決めでご家族の意見が割れる、という話はこれまでも何度か書いてきましたが、リバースモーゲージが絡むとその重みが変わってきます。担保に入るのはご自宅そのものですし、契約者が亡くなった後の清算のしかたによっては、同居していないご家族の生活設計にも関わってくるからです。外壁塗装の工事内容は施主であるご本人の判断で決めてよいことだと思うのですが、その費用の「出どころ」だけは、早い段階でご家族と共有しておいていただきたいと、いつも思っています。