お庭に浄化槽や汚水桝がある家では、地面に丸い、あるいは四角い蓋が埋め込まれています。ふだんの生活では気にも留めない場所だと思うんですよね。私自身、前職で外壁塗装の窓口を担当していたとき、恥ずかしながらこの点検口の存在を意識したことがほとんどありませんでした。
長野県のあるお客様から、工事が終わってしばらくしてからお電話をいただいたことがあります。浄化槽の汲み取り業者さんが定期点検に来たら、蓄積した泥や汚れが原因ではなく、点検口そのものが塗料で固まっていて開かなかった、というお話でした。業者さんはドライバーやヘラで縁をこじ開けようとしたそうなんですが、結局その日は作業を諦めて出直すことになったと聞きました。
高圧洗浄や下塗り、上塗りの工程では、足場の周辺や庭先も塗料や洗浄水が飛び散らないよう養生シートで覆います。ただ、地面に埋め込まれた点検口は外壁そのものではないので、養生の優先順位から漏れてしまうことがあるんです。とくに雑草や落ち葉で蓋が半分隠れているようなお宅だと、職人さんが蓋の存在に気づかないまま作業を進めてしまうケースも実際にあります。
私が現場で聞いた話では、蓋のまわりだけ色が違う塗料で汚れていて、後から「あ、これ点検口だったんですね」と気づいた職人さんもいたそうです。悪気があるわけではなく、単純に見えていなかった、というのが実情なんだと思います。
厄介なのは、点検口が塗り固まっていることに気づくタイミングが、たいてい外壁塗装が終わってからしばらく経った後だということです。定期点検や汲み取りのタイミングで初めて発覚するので、施工した業者との記憶も薄れていますし、「これって塗装のせいですか」という確認から始めないといけません。
長野県のお客様の場合は、結果的に業者さんが無償で対応してくれたので大きなトラブルにはなりませんでしたが、蓋の建て付けを壊してしまって交換費用が発生したという話も、別のお客様から伺ったことがあります。数万円程度とはいえ、外壁塗装の見積もりには入っていない出費なので、気持ちの上での負担も大きいんですよね。
浄化槽や汚水桝だけでなく、散水栓、防犯カメラの配線、宅配ボックスの操作パネルなど、外壁以外にも工事の巻き添えになりやすい設備は意外と多いものです。現地調査のときに、こうした設備の位置を業者と一緒に歩いて確認しておくと、養生の抜け漏れをかなり防げます。
私は打ち合わせの際、できるだけお客様と一緒に敷地をぐるっと歩くようにお願いしています。図面や写真だけでは伝わらない、雑草に隠れた蓋や、普段は意識しない設備の位置が、実際に歩いてみると見えてくることがあるからです。ちょっと面倒に感じるかもしれませんが、この一手間が後々の安心につながると、私は思っています。