太陽熱温水器というと、少し懐かしい響きに感じる方も多いかもしれません。昭和の終わりから平成の初めにかけて、給湯代の節約になるからと多くのご家庭で設置されました。ただ今は電気やガスの給湯器に切り替わっていて、屋根の上のタンクや集熱パネルはただの飾りになっている、というお宅を私はこれまで何度も見てきました。
外壁塗装や屋根塗装の見積もりを取る段階では、営業担当も「この設備、今も使っていますか」とは聞いてくれないことがあります。使っていないものだから、塗装の邪魔にならなければそのままで構わない、という空気で話が進んでしまうんですよね。
忘れられないお話があるんです。岡山県のあるお客様は、屋根塗装と外壁塗装を同時に頼むことになり、見積もりの段階で古い太陽熱温水器の存在をご自身から業者に伝えていました。業者側も「それなら下に架台があるので、塗装の前に外しましょう」と提案してくれたそうです。
ところが実際に足場が組まれ、いざ外そうとした段階になって、架台のボルトが錆びついて固着していることが分かりました。タンクの中には水が残ったままで、想像していたより重く、配管も屋根の内側まで通っていて、切り離すには防水処理までやり直す必要が出てきたのです。結局、当初の見積もりにはなかった撤去費用が追加で発生し、お客様は「最初にちゃんと言われていたら、心の準備もできたのに」とおっしゃっていました。
太陽熱温水器の撤去が厄介なのは、外から見える部分だけでは中の状態が分からないからです。架台のサビ具合、配管の這わせ方、タンクの重量、これらは実際に手を触れてみないと正確には判断できません。屋根の防水層に穴が開いていることもあり、外した後にその部分をどう補修するかまで含めると、撤去は思っている以上に手間のかかる作業になります。
加えて、タンクや架台は産業廃棄物として処分する必要があり、その運搬・処分費用も別途かかってきます。ここを最初から見積書に細かく書いてくれる業者もあれば、「撤去は別途相談」とだけ書いて、実際の金額は後回しにしてしまう業者もあるというのが、私が現場で見てきた実感です。
もしご自宅の屋根に使っていない太陽熱温水器が残っているなら、見積もり依頼の時点で写真を添えて業者に見せることをおすすめします。そのうえで、撤去費用が塗装費用と別枠になっているのか、防水補修まで含まれているのか、廃棄物処理費は誰の負担になるのかを、契約前に一つずつ確認しておくと安心です。
逆に、屋根に負担がかからず塗装の妨げにもならない場合は、無理に撤去せず塗り込めてしまうという選択肢を取られる方もいます。どちらが良いかは家の状態によって変わってくるので、業者に相談しながら決めていただければと思います。