前職の窓口業務をしていた頃、久しぶりに実家に帰ったら市役所から封筒が届いていて、外壁のひび割れや雨樋の傾きを指摘されていた、というお客様がいらっしゃいました。空家等対策の特別措置法に基づく通知で、このまま放置すると固定資産税の優遇が外れてしまうかもしれない、という内容だったんですよね。
そのときのお客様は、とにかく外壁を塗り直せば見た目が良くなって指定を免れると思い込んでいらっしゃいました。私も当時は詳しくなかったので、一緒に資料を読み込みながら勉強したのを覚えています。
行政が確認するのは、外壁の色あせや汚れそのものというより、倒壊の危険性や、衛生上・景観上の管理不全の状態なんですよね。ひび割れの奥にある構造的な傷みや、雨漏りの跡、庭木の放置なども合わせて見られることが多いようです。塗装で表面を整えても、内側の劣化が進んだままでは、根本的な解決にはならない場合があります。
これは業者選びとも重なる話で、外壁塗装の見積もりだけを取って安心してしまうと、実際に必要だった下地補修や雨漏り対策が後回しになってしまうことがあります。
長野県のあるお客様から、こんなお電話をいただいたことがあります。「親が亡くなってから誰も住んでいない実家に、市から通知が来た。外壁を塗ればいいんですよね」と。私は詳しい状況を伺ってから、まず現地を見てもらえる業者を探しましょうとお伝えしました。
実際に見てもらうと、外壁よりも屋根の一部が破損していて、そこから雨水が入り込み、床下まで傷んでいることが分かりました。外壁塗装だけを急いで済ませていたら、指定を回避できないまま、余計な出費だけが増えていたかもしれません。
空き家の管理で本当に悩ましいのは、実は工事の中身よりも、その家をこれからどうするかという方針が定まっていないことなんですよね。売るのか、貸すのか、いずれ住むのか。方針によって、外壁塗装にどこまで費用をかけるべきかも変わってきます。
更地にする可能性があるなら、大がかりな外壁塗装は費用が回収できないこともありますし、賃貸に出すつもりなら、外観だけでなく設備面も含めて考える必要があります。行政からの通知をきっかけに、家族で話し合う時間を持っていただきたいと思っています。