テレビCMや駅の看板、ネット広告でよく見かける会社だから安心だろう、と思って外壁塗装業者を選ばれるお客様は、実はとても多いです。私自身、前職の窓口業務で「あの会社、テレビで見たことあるから」という理由で相見積もりを取らずに契約を決めかけたお客様に、何人もお会いしてきました。
ただ、少し立ち止まって考えていただきたいのです。テレビCMの放映には、決して小さくない金額がかかります。看板の設置費、広告代理店への手数料、営業マンの人件費、コールセンターの運営費。こうした費用は会社の売上、つまり工事を発注したお客様が支払う金額の中から出ています。広告費が高ければ高いほど、その分どこかで価格に反映されているというのが、私が業界で見てきた実感です。
もちろん、広告を打つこと自体が悪いわけではありません。信頼を積み重ねてきたからこそ大きな広告を出せる、という会社があるのも事実です。ただ、その広告費と工事の中身が見合っているかどうかは、お客様ご自身で確かめる必要があるんですよね。
忘れられないお話があるんです。関東のあるお客様が、大手広告塔の会社に依頼を決めた後、たまたま私の元へ見積書を見せに来られたことがありました。金額を見て驚いたのですが、内容は近隣の工務店とほとんど変わらず、価格だけが数割高い状態でした。よく聞くと、実際に足場に登って塗るのは提携先の職人さんで、その会社自体は営業と管理をしているだけだったのです。
知名度があること自体は悪いことではありません。ただ、広告費をかけられるだけの体力がある会社と、丁寧な施工をしてくれる職人が同じ現場にいるかどうかは、まったく別の話なんですよね。テレビで見た安心感と、実際に壁を塗る手の確かさは、残念ながらイコールではないのです。そのお客様は結局、内容をよく確認したうえで契約を進められましたが、「知らなかったら疑問にも思わなかった」とおっしゃっていたのが印象に残っています。
では、広告をあまり打っていない地域の業者をどう見極めればいいのか。私がお客様にお伝えしているのは、過去の施工写真を年代順に何件か見せてもらうこと、そして可能であれば現場を管理する職人さんご本人と直接話をしてみることです。広告費に回すお金が少ない分、その分を材料や手間に使っている業者は、案外こうした問い合わせに丁寧に答えてくれます。
逆に、聞いても曖昧にはぐらかされたり、営業担当としか話せない状態が続くようであれば、少し慎重になった方がいいかもしれません。広告の有無よりも、目の前でどれだけ具体的な話ができるか、という点を見ていただきたいと思っています。
先日も、長年地元で営業されている小さな塗装店に依頼された方から、お話を伺う機会がありました。テレビでは見たことがない会社でしたが、近所の評判を頼りに問い合わせたところ、社長自らが現場に立ち会い、細かな要望にも一つずつ応じてくれたそうです。派手な広告はなくても、口コミだけで長く続いている業者には、それだけの理由があるのだと感じました。
業界に身を置いて20年近くになりますが、広告費をたくさんかけている会社が悪いというつもりは全くありません。大きな会社には大きな会社の安心材料もあります。ただ、その費用がどこから出ているのかを一度考えていただくだけで、見積もりの見方は変わってくるはずです。
結局のところ、広告の規模だけで業者の良し悪しを判断するのは難しいというのが、13,000件以上のマッチングを見てきた私の結論です。名前を知っているかどうかではなく、見積もりの中身、施工実績、担当してくれる人の対応。この三つを複数の業者で比べてみて初めて、その価格が広告費込みなのか、それとも純粋な工事費なのかが見えてくるように思います。
お客様には、CMで見た安心感を否定してほしいわけではなく、その安心感の中身を一度確かめてから決めていただきたい。それが、長く現場を見てきた私からの正直な思いです。