外壁塗装は、いきなり金額が出てくるわけではありません。まず業者が家に来て、外壁や屋根の状態を見る。この「現地調査」があって、はじめて見積書がつくられます。当たり前のことのようですが、ここがどれだけ丁寧かで、その後の工事の質が大きく変わってくるんですよね。
前職で初めて調査の現場に立ち会った時のことを、今でも覚えています。ある業者の方は、脚立を出して屋根まで上がって、軒の裏やコーキングの切れ目を一つひとつ手で触って確認していました。一方で、別の現場では、車から降りて家を数分ぐるっと眺めただけで「だいたい分かりました」と。同じ「現地調査」という言葉でも、中身はまるで違うのだと、その時に思い知らされました。
外壁の傷みは、目立つ正面の壁だけに出るわけではありません。むしろ雨や日差しの当たり方で、北側や裏手、あるいは普段見上げない高い場所が先に傷んでいることが多いんです。だからこそ、家の四方をきちんと回って、上の方まで確認してくれるか。そこを私はいつも気にして見ていました。
長野県のあるお客様から、こんなお電話をいただいたことがあります。「来た業者さんが、私の家の裏の壁をずっとしゃがんで見ていたんです。基礎の近くまで。あんなに見てもらったのは初めてで」と、どこか嬉しそうに話してくださいました。お客様にとっては、丁寧に見てもらえたという、それだけのことが安心につながるんですよね。家は、その方が長く暮らしてきた大切な場所ですから。
逆に、写真を一枚も撮らずに、メモも取らずに帰っていく。それで後から細かい見積書が出てくると、いったい何を根拠に金額を出したのだろう、と私などは思ってしまいます。
点検が終わったあと、その場で家の状態を説明してくれるか。これも一つの分かれ道だと感じています。
「ここのコーキングが切れかかっていますね」「この壁は思ったより傷みが進んでいないので、今すぐでなくても大丈夫ですよ」。そんなふうに、見たままを言葉にして伝えてくれる方は、お客様の側に立ってくれていることが多い。傷んでいない箇所を「傷んでいない」と正直に言ってくれるかどうか、というのは、案外大事な見極めなんです。
前職で受けたご相談の中には、調査のあとに不安だけを強く煽られて、必要以上に大きな工事をすすめられた、という声も複数ありました。こうしたやり取りで気持ちが急かされてしまうと、冷静な判断が難しくなってしまいます。点検は、不安を増やす場ではなく、家の今を知るための場であってほしい。私はそう願っています。
もし可能なら、調査の時にお客様自身も少しだけ立ち会ってみてほしいんです。専門的なことは分からなくて当然です。それでいいんです。
業者の方がどこを見ているか、質問にきちんと向き合ってくれるか、面倒くさそうにしていないか。そういう人としての姿勢は、専門知識がなくても伝わってくるものだと思います。先日も、あるお客様が「全部は分からなかったけれど、丁寧に答えてくれる人かどうかは分かりました」とおっしゃっていて、まさにそこなんです、とお返事しました。
業界に身を置いて20年、たくさんの調査を見てきて思うのは、最初の点検でのふるまいは、その後の工事にもだいたいそのまま続くということです。最初に手を抜く方が、見えない下地で急に丁寧になる、ということはなかなかありません。